オーナーの気付きや所感など備忘録

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OWNER'S NOTE

気付きや所感など備忘録

変化の多かった2023年。起承転結なら間違いなく「転」の年も気付けば11月。安定感のある繰り返し作業は疑問が生じにくく、一見すると積み上がっている様に見えるので、何か変わった事をしようとすると拒絶反応が出る事も少なくない。人として成長し続ける必要は無いと思うが、ルーティンだけでは会社として現状維持もできないと言う意味では、積上げる努力よりも壊す勇気の方が大切かなと思う。そもそも飽きずに続ける事とただ繰り返す事は違くて、興味のない事は吸収できない自分にとって興味の対象は学びに直結している。向いてないから飽きるんじゃないか?情報が多すぎて刺激を受けにくい世の中だが、まだ見ぬ興味の存在を疑わず、「結」に向かっていきたい。
2023.11

「薪ストーブ流行ってるんでしょ?」なぜか最近よく受ける質問だが、良くも悪くも横這いな印象だ。イニシャルコストや薪の準備、家族の理解などハードルは低くない所に来て、ヨーロッパの特需や原材料高騰、輸送コスト増に円安と値上がり要素しかなく逆風吹き荒れる業界。変わらないスタッフ人員に比べ累積で増えるメンテナンスの件数を考えると年々忙しくはなって当たり前だが、流行っているとは言い難い訳で、隣の芝生が青く見えるだけの事だろうと言う結論に達する。ただ、新規性や高品質を求める割合が増加傾向で質が上がっている一方で、ノスタルジックにはコストが優先されると言う市場の変化は肌感覚である。技術も含め変わらず売れ続けるモノなんて存在しない。
2022.12

「黎明期」夜明け前にあたる時期。新しい時代や文化、文学芸術の運動などが始まろうとする時期とある。未だ黎明期の日本に薪ストーブが普及し始めたのが30~40年ほど前だろうか。当時これを選んだお客さんや業者のセンスに感心もするが、それより手探り感が半端ない危険な煙突施工と、海外から物だけ持ってきて概念は置いてきた様な理解の低さに驚く事も少なくない。この時代があって今があるわけだが、流行りでやった結果、中長期で失笑されない様にと気が引き締まる。「金は一時だが仕事は一生残るぞ」と独立前に世話になった棟梁の言葉が染みてくる。ただ、失笑を恐れず何かを始める事も大事な訳で。と考えつつ、さて何を始めようか。 

2022.10

 誰しも魅力を感じる “良い”薪ストーブ。しかし「何にとって」「誰にとって」などストーブ屋によって「良い」の定義が違うから、お勧めや売れ筋も違ってくる。全てを叶える薪ストーブは無いとよく言われるが、「綺麗な焔が見たい」「お部屋を暖めたい」「料理がしたい」「価格も大事」「憧れのメーカー」など自分たちが薪ストーブに望むことに優先順位をつけて絞り込めば自ずと見えてくる1台が有るはず。そんな出会いを叶えるのも薪ストーブ屋の大事な仕事だと思う。薪ストーブに限らずその提案されているモノが、ただ単にショップにとって“都合の良い”モノでは無いだろうか?モノ選びには意外と落とし穴は多い。

2022.2

「ストーブと煙突はあるので取付だけしてほしい」
 「もらったストーブの修理をしてほしい」

 「破損部品の交換ではなく溶接や接着補修で直してほしい」

「誰が取付けたかわからないが火事にならないか確認してほしい」
などなど“当社外施工“において年に数件寄せられる問合せ。結論から言うと断らざるを得ないのだが、問合わせの意図として安全の担保や本体の機能回復、燃費向上など期待がある。安請け合いする事は危険な状態での使用を許可することになり、焔の文化を創造するとは考え難く、社内的にも無責任な行動となる。自己責任を否定しようとは考えていないのでご理解賜りたい。

2021.12

薪ストーブと上手く付き合える人とそうでない人がいる。様々な理由の中に「焔の気持ち」を感じとる事ができるかどうかがある。当然火がモノ言う訳もなく、何やらファンタジーな空気が漂う話だが、生き物を相手にしているような、料理を作るような、音を奏でるような・・・焔を前にした時に感じる感覚的な要素が非常に重要だったりする。全て理屈で使用したり、ほったらかしで使う人より、目をかけ語りかけ五感で感じ取り使う人の方が焔がどうして欲しいか?どうなりたいか?を理解し良い方向に導けるものだ。色々な理論や裏付けも大事だが、焔を楽しむ上で言葉で説明できない感覚とのバランスも保ち付き合いたいと思う。

2021.9

世の中に溢れる物を評価や判断する上で、ラインナップを分類する基準がその一つだったりする。まずはサイズや量によって値段分けられている物。大きいほど多いほど高価、小さいほど少ないほど安価といった具合で、こう言った商品は普及を目的に量産された物によく見られる。価格競争にさらされ生産コストを優先して作られている印象がある。片や品質で分けられている物。同じサイズでも構造や材料、手間、技術などが価格に反映されている物で、生産者の拘りが詰め込まれブランド力や価値がある物だと言える。この違いは自動車や食事、洋服、楽器から住宅など身の回りの様々な物に伺え、薪ストーブも御多分に洩れずと言った感じだ。良し悪しの話ではなく、選択の目的を見失わない為の判断材料として加えてみては良いのではないかと思う。
2021.8

全国的にメンテナンスの料金は2万~3万円と誰が言い出したかわからない金額でなんとなく足並みがそろっている。たしかに作業内容や出張費、養生、消耗品など考えるとまぁ妥当な金額だと感じているが、肝心の作業内容はベールに包まれ内容に統一感のないことこの上ない。現在当社の標準作業は【回転ブラシ式煙突掃除】【壁床養生】【給気経路風圧洗浄】【ガスケットチェック】【本体リペイント】【可動部調整】【灰煤分離収集】【劣化診断】【焚き方診断】【スス診断】【全件記録管理】と、これまでに積上げたどり着いた内容で所要時間約1時間半。年間300件近く行っている。作業の意図も理解していない素人が市販の道具で養生もせず煙突掃除をして料金は同じって他業界だったらあり得ない。メンテナンスこそ資格が必要だと感じる。 

2021.7

ショップにとって使用方法や取付が簡単な物ほど一見優秀だ。が、施工性や手離れだけを評価し製品を選択するのは、ショップ都合でありユーザーの希望には答えておらず短絡的ともとれる。普及を目指し中間を省きたいメーカーや商社の意図も見え隠れすることからも、将来自分の首を絞めることになりかねない。誰でもよいとは「わたし」や「あなた」でなくてもよいと言う事で、楽して儲けることに慣れ既得権があるかの如く後者を排除することでしか回らない業界に発展があるとは思えない。その製品を使うのにどれだけのスキルや経験を要するのか?先行者には十分な時間の利があるはずで、何事も角に追いやられたくなければ日々精進が必要だと感じる。

2021.7

古いストーブの修理には明確な目的を持たないといけない。兎角人の記憶は美化され新品当時の暖かさを過大評価しがちだが、そもそも非効率なストーブは主要部品やガスケット交換程度で隙間が戻る事はなく、大きい薪を沢山詰め込んで長時間燃焼することが許された時代の品と、熱の取り出し方伝え方が高効率な現行品では暖かさはもちろん薪の消費も含め比べ物にならない。さらに低下した住宅の断熱性能が追い討ちし、修理をしても当時感じた暖かさや燃費を戻す事は難しい。働き続けた往年の愛車は車検通しただけで新車になる訳もなく、燃費と効率の点で現代のコンパクトカーにかなわない。ではなぜ修理するのか?

2021.6

 「それ本物の煙突?」と現場作業中に質問を受ける時がある。と言う事は偽物も有ると言うことだろうか?煙突とは単に燃焼を促進させる筒状の構造物。筒状の構造物なら本物も偽物も無いとなってしまう。質問の意図としては明らかに偽物を知っているようで、またある時は「これ本物の薪ストーブですか?」と聞かれる事もある。どうやら薪ストーブと煙突には本物と偽物が存在するという認識が世の中にあるようだ。「高価=本物」だとは思わないが、「安物=偽物」である事はあながち間違いではないかもしれない。まぁどちらにしても偽物で仕事する積もりも無いので質問には「そうですよ」と返している。

2021.6

 イタリアベローナで隔年開催される世界最大級のバイオマスエネルギーの見本市PROGETTO FUOCO。暖炉や薪ストーブはもちろん調理器、ボイラー、ペレット、燃料からコンポーネントなど諸々合わせて800近くの出店者。125000平方メートルの敷地に8つのパビリオン。70ヵ国以上から7万人以上の来訪者とまぁ日本では信じ難い規模だ。薪を燃料とする機器に求められる未来、年々変化するトレンドや方向性など最先端の情報に溢れ、同様の見本市がヨーロッパ各国で行われていることからも、しっかりとした市場があることがわかる。カーボンニュートラルや脱炭素、SDGsと言うワードが注目されるにも関わらず薪が取り上げられない日本の現状を理解した上で、少しでも浸透させるには何が必要か。企みを持続することが大切だと感じている。
2021.6

自宅では10数台ストーブを入れ替え使用してきたわけだが、中でも1450、2040、2040改、2550とアンコールだけで4種類。自分をストーブの世界に引き込んだモデルであり2017年まで名機2550と数年暮らした。これがラストストーブだと思ったその場所には現在ノルンが鎮座している。今でこそ国内で人気のノルンだが、初めて見たのは2017年。デンマークのHETA社に訪れた時で、飾り気のない凛とした街レムヴィで生まれたこのストーブはデンマークの繊細さとヒュッゲの世界観をまとっていた。最近流行りの縦型と言えばそれまでかもしれないが、自分にとっては出会いから日本で受け入れられるまでを見てきた特別な一台。これがラストワンになるだろうか、将又新たな出会いがあるだろうか楽しみでもある。
2021.5

創業当初から現在まであまりスタンスは変わっていない(つもりでいる)。自分の中に軸みたいなものがあって、経験や情報は裏付けや根拠または修正の材料に過ぎない。その時々で理想や目的は持つが絶対ではなく結果を求めて能動的に動いている感じではない。流れに逆らわずやってきたし、これからもそうしようと思う。目的があって理念が無いのは節操がない。理念があるから目的が変わることだってある。結果と言うのは過程の断片であって、判断材料として見るには薄くお金をかけ奇策から生まれる一時的な結果は往々にして続かない。「今何をしているか?」が大事で「何をしたか?」「何をするか?」は重視しない。積重ねとはそう言うものだ。

2021.5

火のある暮らしをしていない人からストーブの提案を受け入れる人の気が知れない。 誰でも使えるエアコンやファンヒーターなら未だしも 。「家ではどんなストーブ使ってますか?」ストーブ選びに行ったなら真っ先に聞いてみてほしい。ストーブはしょせん道具だが、焔の魅力や火のある暮らしは年中付き合っている人にしかわからない。良し悪し含めて火のある暮らしな訳で、受け入れられないならやめた方が良いですよって提案もあり得る。 本質に蓋をし製品の表面的な魅力だけを伝え物売る事が市場を大きくするとは考え難く、火を焚くということが文化であるなら文化的生活をしている人に相談すべきである。

 これから使い始める人もストーブ文化を創造する一人だと、 まだまだ途上中の日本にいて思う。

2021.5

薪ストーブは薪を燃料とする暖房器具。だが、仕事では暖房器具を扱っていると言うよりは火を扱っているという感覚が近い。他の暖房器具に興味があるわけでもないし、火のある生活が好でやってるからかな。ストーブ中心で物事考えるストーブ屋の多いこと。火が中心である事を忘れてはいけない。ストーブはあくまで入れ物。脇役。主役は火であり、焔のある暮らし。
『薪を焚くということが暖をとる以上の何かだと悟った日を、私は今でもありありと思い出せる』
“薪を焚く”(著者:ラーシュ・ミッティング、翻訳:朝田 千惠)のプロローグにある一文。おすすめの1冊。つい先日お話させて頂いた翻訳者の朝田さんは、とても柔らかな雰囲気で素敵な方でした。貴重なお時間ありがとうございました。
2021.5

創業から10年以上、この業界に就いてから20年以上経ち情報や体力的に充実していた折、ドイツで受けた研修はその後の自分の方向に大きな影響を与えている。
ドイツ国内に3~4ある煙突掃除人のマイスター養成校。 大小の掃除人組合が50近く。2~3人規模の掃除人チームが全土に約8000社、20000人以上の煙突掃除人がいると言う。ヨーロッパ全体となると想像もできない。歴史が土壌や法規を作り人々の理解につながるといった文化や懐の深さを感じた。片や小さなパイでシェアの奪い合いをしている日本の現状・・・
あれから数年、仲間と業界の為にと協会で奮闘しているが、そんな自分を突き動かしている原動力の一つだろう。
2021.5

日々設置工事やメンテナンスを行う中で、効率を上げる為オリジナルの道具を作ったり工具を改造するなどして作業を行っている。同じ作業の繰り返しの中で効率や改善を見つけ対処するのは面白く、気付けば開業当初に比べ時間は短縮されていても、作業の中身はかなり濃いものになったという自負もある。ホームページを見たりお店に足を運ぶだけでは中々見えてこない部分かな。
売り手の顔も見ずにネットでモノ買う使い捨て時代にあって、店とも長く付き合うならじっくり話をして決めるのも悪くないと思う。話は得意ではないが嫌いではないので声をかけてみて下さい。
2021.5